続き

ここからは前頁でで整流した電源から12Vの定電圧電源を作ります。
方法は次の3種類の方法でやってみます。Bで全ての事は足りるので、@Aは読み飛ばしてもOKです。
@ツェナーダイオード
Aトランジスタ+@
B3端子レギュレータ(その1)
C3端子レギュレータ(その2)


@ツェナーダイオード

まずは、ツェナーダイオードとは何でしょう?ダイオードはご存じの通り1方向にしか電流を
流さない素子です。逆に接続したときは電流が流れるのを断固拒否します。
しかしツェナーダイオードは、逆接続すると、ある電圧からは電流を流してしまいます。
この時の電圧をツェナー電圧(降伏電圧)といい、いろいろな電圧のツェナーダイオードが
市販されています。そしてツェナーダイオードは、わざと逆に接続して使用します。

このような向きに挿入します。
ツェナーダイオードの両端の電圧は、ツェナー電圧に等しくなります。


よく回路の電圧保護などにつかわれますね。
Aの部品は10V以上の電圧がちょっとでもかかると壊れてしまうとしましょう。
直前に入っている部品は9Vのツェナーダイオードです。9V以上の電圧がかかると
電流を流すようになるので、回路上の抵抗に流れる電流が増え、
(上図には書いてありませんが、次の図のように電源側に抵抗があると思ってください。)
その結果、抵抗の電圧降下が大きくなり電圧は9V以下に下がってしまいます。
電圧が下がるとツェナーダイオードには電流が流れなくなるので
ふたたび抵抗の電圧降下が小さくなり電圧が上がります。これを高速に繰り返しているわけですが
結局9V付近を行ったり来たりで9Vに落ち着いているようにみえます。
つまり9V以上に電圧は上がらないわけです。これは電圧リミッターとして使用した例です。

別の見方をすると、この回路は入力に9V以上の電圧をかけた時、9Vに電圧を維持しようとしています。
つまり9Vの一定電圧を作る電源として機能しています。これが定電圧回路の基礎になります。

この回路を、12Vのツェナーダイオードにし、入力電源に(その1)で作った直流電源を入力すると
12Vの定電圧電源が出来上がります。それでは実際に回路設計をしてみましょう。



基本回路は上記の通りです。入力には(その1)で整流した直流電源を想定します。
ツェナーダイオードは12(V)、1(W)タイプを使用するとします。初めから決まっている値は以上です。
のこりの抵抗の値をどうすればいいのか計算します。

1.まず最初に無負荷状態の時にツェナーダイオードに流せる最大電流を考えます。
今回は1Wまで耐えられるツェナーダイオードを使用しています。

W(ワット、電力)は電圧×電流で求まります。つまり、12(V)×電流=1(W)
が成立する電流が答えになります。電流=1÷12(V)=0.08(A)です。

つまり、理論値でいくとこの回路には0.08(A)まで流すことが出来ます。
それでは抵抗値の計算です。入力電圧が20(V)、ツェナーダイオードは12(V)なので
抵抗で8(V)だけ電圧が落ちれば良いことになります。電流は0.08(A)です。
中学校で習ったはずのオームの法則より、
電圧=電流×抵抗です。つまり、抵抗=電圧÷電流 ですね。電圧と電流をあてはめると、
抵抗=8(v)÷0.08(A)、=100(Ω・オームと読む)になります。

ちなみに負荷に流すことの出来る電流は、無負荷時にツェナーダイオードに流れる電流と
同じところまでです。今回の場合は0.08(A)までとなります。それ以上の電流を流すと
抵抗の電圧降下で9V以下になってしまいます。もともと0.08A流したときに12Vになるように
設計したので当たり前の話ですね。仮に0.1(A)流したとすると、抵抗での電圧降下は
電圧=0.1(A)×100(Ω)、=10(V) よって入力20Vで、抵抗で10V電圧が落ちるので
負荷側には10Vにしかなりません。


Aツェナーダイオード+トランジスタ

ツェナーダイオードの回路では大きな電流を得ることは出来ません。
Aではトランジスタを使用して、もっと大きな電流が取れるようにします。
回路は@よりちょっと難しくなります。トランジスタの動作を良く理解していない人は
読み飛ばして下さい。この回路は大学などでよく練習問題に出されます。



本命は次のBなので、動作だけ簡単に説明します。

見ての通り、この回路は入力からTr1のC-E間を通って出力されます。

Tr1のベース電圧は、R1電流が少なければ、R1の電圧降下がなく、ベース電位も確保され
コレクタ−エミッタ間の電圧降下はおさえられます。逆にR1電流が大きければ、R1の電圧降下により
Tr1ベース電位は低下してTr1コレクタ-エミッタ間の電圧降下は増大されます。

R1の電流値を決めるのはTr2になります。さらに細かくいえばベース電圧です。
Tr2のエミッタ電圧はZDにより一定に保たれます。Tr2のベース電位は出力電圧を
分圧した形で接続されています。分圧点の電圧は出力電圧に比例して増減します。

平衡点から電圧上昇した場合、Tr2のベース電圧も上昇し、R1電流が増加します。
その結果Tr1のコレクタ、エミッタ間の電圧降下が増え出力電圧が抑えられる方向に作用します。

平衡点から電圧降下した場合、Tr2のベース電圧は降下し、R1電流が抑えられます。
その結果Tr1のコレクタ、エミッタ間の電圧降下が抑えられ出力電圧は増大します。

この回路はVRを調整することにより、出力電圧を可変させることが出来ます。

注意点としては、出力に過大電流が流れるとTr1に限界まで電流が流れるので
Tr1が壊れてしまいます。電流保護回路を挿入しなくてはなりません。


B3端子レギュレータ(その1)

では最後に本命のレギュレータICを使った回路です。
これが一番簡単で性能もいいので、通常はこれで十分です。

ものは左写真のようなもので、一種の電源用ICです。
見ての通り足が3本あるので、「3端子レギュレータ」と
呼ばれています。もっと足の多い多機能なレギュレータ
もありますが、一般的にはこれを指します。

どのような機能を持っているかというと、入力端子に
電圧を加えると、出力端子に決められた電圧が出てきます。

一種の電源ICで、中にはAで紹介した回路をもっともっと高機能化した
回路がパッケージされています。ショート時などの保護回路も入っています。

いろいろな電圧のものが販売されており、5V、12V、15Vなど
が頻繁に使用されています。形式や種類については
部品のページに詳しく紹介します。(まだ作ってないけど)

大きさは写真上の1円玉と比較してみて下さい。
最大1A程度の電流を流すことが出来ます。
発熱も激しいので、放熱版を付けるためのネジ穴が付いてます。
(真ん中の小さなのは100mAタイプ)


Aの回路を見てもらっても解るとおり、入力端子の電圧を、損失させて
出力電圧を一定に保つので、入力端子より高い電圧は取り出せません。
通常、出力電圧+3V〜15V程度で使用します。電圧差は熱に変わるので
あまり電圧差が大きいと、放熱が大変になります。

実際の使い方はとても簡単です。下記回路のようになります。

(注:上の回路図は真ん中がGNDですが、実物がそうという意味ではありません。
種類によって異なりますので、データシートで確認して下さい。)

入出力間でGNDを共通にして、入力端子に電圧を加えるだけです。
(その1)で作った電源を加えればそれでOKです。
それだけで、決められた電圧が出力側に出てきます。

入力電圧に車のバッテリやシガーライタからの入力にしてももちろん同じです。
車で9Vの製品を使いたい、などの時は、このような回路が必要になります。

C1〜C3のコンデンサが回路上に含まれています。これはICを安定動作させるために
必要なので、おまじないだと思って入れておきましょう。
C1、C2は0.1uF程度のセラミックコンデンサ、C3は適当なサイズの電解コンデンサです。
レギュレータのデータシートを見れば詳しく指示されています。

さて、レギュレータの回路は簡単ですが、やっかいなのは熱対策です。
このタイプのレギュレータは、目的の電圧を得るために余分なものを熱に変えています。
そして発熱量は電流にも関係してきます。出力側により多くの電流が必要なら、
レギュレータもより激しく発熱します。余り熱くなると壊れてしまうので、アルミ板などを付けて
放熱してあげる必要があります。さわれなくなるぐらい熱くなっていたら要対策です。

難しい設計はあとで記載したいと思いますが、最大電流の1/3ぐらいで使うならそのままで大丈夫です。
今回は300mAの電源を作るのが目的なので、素子は1Aタイプのものを使用しました。


B3端子レギュレータ(その2)
今度は一定の電圧ではなく、何種類かの電圧または、
連続的に可変出来る電源を作ります。
またお手軽に3端子レギュレータを使って作ります。

こういった用途に便利な専用のレギュレータがいくつかありますが、
代表的なLM317、LM350というレギュレータを使用します。

LM317は1A、LM350は3Aまで使用できます。
大きさは普通のレギュレータと変わりません。
もちろん熱処理はきちんとしなくてはなりません。

出力電圧は1.2Vから37Vの間で自由に設定できます。
ただし、入力電圧との電位差は40V以内などと、制限があります
ので、詳しいことはデータシートを読んで下さい。
それでは実際の回路を見てみましょう。


(注:上の回路図は真ん中がGNDですが、実物がそうという意味ではありません。
正面から見て左からADJ、OUT、INです。これも、データシートで確認して下さい。)

今度は「GND」のかわりに「AJD」調整端子があります。
原理ですが、このレギュレータは、回路図上のV(点線の矢印部)の電圧が1.25Vに
なるように出力を調整します。VR(可変抵抗)を変化させることにより、AJD端子の
分圧比が変わるので、出力が変化する仕組みです。

簡単な式で書けば、出力電圧=1.25×(1+(VR/R)) となります。・・・公式(1)

VR=0Ω時に最小電圧の1.25となりますが、基本的にそれ以下には出来ません。
0V〜15Vの電源とかはこのICではちょっと面倒です。(ちょっと工夫すれば出来ます。)


では最後にLM317を使って、1.25V〜15Vまで連続可変出来る電源を作ってみましょう。
RとVRの値を決めて、上記回路の通りに結線すれば終わりです。

まずはRかVRの値を適当に決めます。どちらかが決まれば自然と欲しい電圧幅にあわせて
残りの抵抗が決まります。
私の場合、固定抵抗はだいたいの抵抗値は買い置きがあるので、
買い置きの少ない、手元にある可変抵抗(ボリューム)を先に決めてしまいます。

今回は2kΩを使用します。
1kΩでも2kΩでも5kΩでも手元にあるものでかまいません。
このあたりはアマチュアの工作なので適当にあるものにあわせます。
(回路が燃えてしまわないように電力の計算だけはしておきましょう。)

ボリュームの抵抗は0〜2kΩまで変化します。0Ω時は前にも書いたとおり1.25Vになるので、
2kΩになったとき、出力が15VになるようなRを見つけます。公式(1)より、

15(V)=1.25×(1+(2000/R))の解を求めればいいわけです。
R≒180Ωです。


とっちんぺーじ