ここでは簡単な電源回路について説明します。
電源といえば、乾電池から家庭用のコンセントまでいろいろあります。
電源回路を考えるにあたっては、必要とする電圧、電流をまず考えなくては
なりません。最低限これらの仕様が決まらないと作業できませんね。

電圧は好きな電圧がとれれば、何にでも使えて便利ですが、回路が難しくなります。
5V専用、12V専用などと、用途を決めてしまえば、とてもシンプルに仕上がります。

使用できる電流は、大きいにこしたことはありません。大は小を兼ねます。
家庭用の100電源も、東京電力との契約で30A、40A、50Aなどとありますが、
大きいに越したことはありません。電気の使いすぎでブレーカーが落ちるなんて
心配が無くなります。しかし、使用できる電流に応じて、契約料金も高くなります。

電源回路も、使用する電流に応じて、部品もより高いものが必要になるし、
仕上がりも大きく、そして重くなります。携帯にはとても不便ですし、工作も大変です。
この辺の見積はきちんと考えておかなくてはなりません。

ただし、ここで言っている大きな電流とは3A以上ぐらいを想定して話しています。
100mAや1A程度でしたらさほど気にする必要はありません。
一般人が趣味で工作する電源は、20V以下の低圧電源がほとんどなので、
電圧よりも電流が大きな要素といえます。電流に応じて回路も工夫しようといった感じです。

なぜ20V以下の低圧電源がほとんどかというと、身の回りの製品はほとんどが電子化
されています。家電も含めてあらゆる製品が、コンピュータで制御されています。
コンピュータなどの半導体の動作電圧は、ほとんどが5V以下のとても低い電圧で
動作します。そして、電源を自作するときも、それらが対象になることがほとんどだからです。

家庭用の100Vを使用している製品も、中で、実際に必要な12Vや5Vに
電圧を変換しています。携帯電話のアダプタも、パソコンの電源もそうです。
ここが電源回路です。とりあえず入力を100Vにしておけばどこの家庭でも使用できるので
便利だし、安定して電源を供給できるのでこうします。

この製品は12Vで、こっちは5Vで使用して下さいなんて言われたら不便で仕方ないですよね。




以下、家庭用電源の100V(交流)から、12V程度の直流電源を作成し、電圧変換、
整流の仕組みを説明します。次に自動車のバッテリから、10V以下の直流電源作成、
応用として電圧可変タイプの簡単な回路を紹介します。

電源回路(その1)では、家庭用電源のAC100Vから、マイコンなどでよく使用される
DC5V電源をつくってみましょう。手始めに電流は300mA程度とします。

おおまかな回路は、

@交流100Vから交流12V程度に電圧を落とす。
A交流電源から直流電源に変換する。
Bさらに、目的の電圧までぴったり合わせる。

の3段階です。それでは簡単に勉強しながらおつきあい下さい。



@交流100Vから交流12V程度に電圧を落とす。

まずは、家庭用コンセント口の100V(交流)から、扱いやすい低圧の数十V(交流)に下げましょう。
交流電圧を変換するには「トランス」を使用します。これは交流の電圧を変換する部品と考えて下さい。
なぜ?というと、電磁気学の難しい話になるので省略します。特に知る必要も無いでしょう。
(説明できないんだろう〜というつっこみをしてはいけません。)

何Vから何Vに変換できるかというと、いろいろあって、目的に応じたものを購入してくる事になります。
値段は数百円〜数千円です。取り出せる電流の大きさにだいたい比例して高くなります。
さらにほとんどが鉄のかたまりなので、大きさ、重さも大きくなります。


これは100Vから12Vに変換するトランスの写真です。これで電流は1A程度流せます。
大きさは5cm×5cmぐらいです。ほとんどが鉄と銅なので結構重いです。

「トランス」はあまりご存じありませんか?実は見えないけど身近にたくさんあります。
小さいものは電気製品の中に、大きなものでは電柱の上に乗っています。これらも送電電圧の
6600Vから家庭用の100V、200Vに変換しているトランスです。

1次側(写真で0−100Vと書いてある方:一般的に高圧側をさす)に家庭用電源の100Vをつなぐと、
2次側(写真で1A−6V−8V−10V−12Vと書いてある方:一般的に低圧側をさす)に
書いてあるとおりの電圧を取り出すことが出来ます。ここでは12Vの電圧を取り出します。



A交流電源から直流電源に変換する。

交流電源から直流電源に変換する回路を、平滑回路といいます。上の写真のように
うねうねした交流を、なめらかな直流にする意味です。ここでの作業は、

@ダイオードで全波整流
Aコンデンサで平滑

という王道パターンでいきます。それではそれぞれ簡単に説明します。

まずはダイオードの基本特性です。
左図のA(アノード)からK(カソード)の方向には
電流が流れますが、逆には流れません。



このダイオードを4つ組み合わせると面白い動作をします。
左側に交流電源をつないだと考えて下さい。そして、抵抗Rに流れる電流を観察してみましょう。

電流は電圧の高い方から低い方に向かって流れるので矢印のように流れます。
もちろんダイオードのKからAの方向には流れません。

交流電源ですので、+と−が入れ替わります。逆になった時を考えてみましょう。
同様に矢印のように電流が流れます。

この時の抵抗に流れる電流を見ると、前と同じ方向に流れていますね。
Rの上側は常に「+」に、下側は「−」になっています。

このようにダイオード4つで全波整流が出来ます。

実際の波形で確認(観測)してみます。
下記写真のように、トランスの1次側に家庭用電源の100Vを入力します。
各部の波形の様子をみてください。
電圧の下がったトランスからの出力が上記の回路に入力されています。



@は家庭用電源の波形です。デジカメで撮ったのでマスが見づらいかと思いますが、
ピークで141V、周波数は50Hzです。
私たちが普段100Vといっているのは実効値で、ピーク電圧のルート2倍です。
50Hzというのは1秒間に50回振動しているということです。波が50回です。
ということは、1つの波は1/50(秒)ということになり20msecですね。
写真の横軸1マス(1div)は5msecなのでたしかに20msecになっています。



Aはトランスの2次側です。今度は縦軸は1マス10Vです。
実効値で14V程度まで電圧が落ちていますね。トランスには12Vって書いてあるけど、
ぴったり12Vではないので注意が必要です。

Bダイオードで全波整流した波形です。0Vの境に折り返した波形になっています。
0Vを境にダイオードの通り道が変わって、Bには+側の電圧しか現れません。

実際の波形を見ても分かるとおり、全波整流といいつつも、直流とは言えませんね。
単純に交流波形を0Vを境に折り返しただけです。

これを川の流れにたとえると、大雨が降れば増水し、雨の降らない日が続けば、水はなくなります。
しかし、実際には消費圏の上流にはダムがあり、負荷に応じて下流に水を流します。
ダムが十分に大きければ、入ってくる水量や排出する水量が変化しても、ダムの水位は
さほど変化しません。

これと同様なことを電源回路でもする必要があります。ダムの変わりにコンデンサを使用します。


では最後にコンデンサをRと並列に接続します。ここで波形が大きく変化します。

ここに入れるコンデンサは、耐圧と、静電容量に注意して下さい。間違えると、効果がなかったり
頭から湯気をだして怒ってしまいます。(耐えられずに破裂します)
コンデンサの種類は、安価で容量の大きい、電解コンデンサで決まりです。

耐圧はその名の通りコンデンサに加えても大丈夫な電圧です。
余裕を持って必要な電圧の2、3倍ぐらいの値を選んでおきましょう。
今回は2次側の電圧がAC12Vなので、25Vまたは50V耐圧のものを使用します。
(交流の電圧は実行値なので、実際のピーク電圧は約1.4倍になります。
家庭用電源も、一番電圧の高いときには141Vになってます。)

静電容量はダムの広さと考えて下さい。これも大きければいいと言うものでもありませんので
負荷に応じて選びます。負荷1Aにつき1000〜2000uF程度と換算してみて下さい。
今回は300mA程度なので470uFを使用します。




わかりやすいように大きいコンデンサを接続しました。
波形を見てもらうと分かるように、波がありません。

これでとりあえずきれいな直流電源になりました。私の作ったものでは、DC20V程度になっています。
ピーク電圧まで充電されて、そのあと放電するところがないので、充電したピーク電圧を保っています。

放電先は”負荷”なのですが(この回路の場合は抵抗)、負荷で消費する電力より
コンデンサーの蓄えが大きかったのでこのようになります。

では、試しにコンデンサを小さくしてみましょう。今度はあまり蓄えることが出来ません。


D小さいコンデンサと交換しました。


Cと同じ部分の波形です。今度はコンデンサの蓄えに余裕がないので
波打ってしまっています。ダムの水位が増えたり減ったりしています。
Bの波形よりはよっぽど直流に近い波形ですが、電圧が安定していません。
この直流に含まれる交流成分を”リップル”と呼びます。
ノイズや誤作動の原因となります。負荷に対してコンデンサの容量が足りないと
このような波形になります。


ダイオードを4つ使用した整流は、よく使う回路なので1つのパッケージになっているものが
市販されています。といっても秋葉原などのパーツ屋にいかないと売ってませんが・・・。
私は「ブリッジダイオード」などと呼んでいますが、それでいいのかな?。



写真はすべて全波整流用のブリッジダイオードです。説明したようにダイオードが4つ
パッケージされています。足もきちんとどれも4本ありますね。
流せる電流によって大きさが異なります。
何十Aも流せる大きなものまでいろいろあります。携帯電話のアダプタの中にも入っていました。
(ちなみに小型で薄い近代的なアダプタは、ここで説明しているような回路とは異なります。)

この部品は整流回路以外に、こんな応用があります。
たとえばバッテリにつないで使用する装置があるとします。
暗闇で使うことが多く、「+」と「−」を逆につないでしまわないように気を使います。
そう、夜の天体観測の時の赤道儀の電源などがそうです。
これを間に挟めば「+」「−」どっちをつないでも大丈夫なので、事故を防げます。
ちなみにダイオードを2回通過するので電圧が1.2V程度落ちます。


それでは、直流電源になったので、次は目的の電圧にあわせます。


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とっちんぺーじ